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第3話 現状とその解決策

 

風が吹く。
木漏れ日が揺れ、きらきらと輝いている。
爽やかな深緑の山の中、3人の人間と白い生き物が向かい合っていた。
気まずい沈黙が漂う。

「司くん、流石にこれは食べれないと思うよ…」
「たべっ!?」
「…美味しくなさそう…」
「お、お前、おれたちを食べるのか?!」

人間たちの会話に、白いものの一匹が口を挟んだ。
その発言に、他のものも騒ぎだす。

「や、やめろ!」
「おれたちはたべてもまずいだけだぞ」
「そ、そうそう」
「むしろたべるところないし」
「たべるならこいつを…」
「おいばかやめろ」

言葉だけなら怯えているようだが、甲高い鳴き声(?)でふわふわと浮きながら言っているので、緊迫感はあまり伝わってこない。
白いものの反応は無視して、セイルーンが話しかけた。

「ねえ、この山の名前ってわかる?」
「やまはやまだろ?」
「何でそんなこと聞くんだ?」

あっさりと応じた白いものたち。
しかし逆に質問され、言葉につまってしまった。

「えっと…アンネちゃん、説明お願い!」
「ええ!?」

突然、会話を丸投げされ困惑したアンネは周囲を見た。
皆、自分を見ている。
その中には、彼女の大好きな司も含まれていた。
彼の目が、「説明は任せた」と言っているように見えのだろう。
恋する乙女は愛する男のため、この任務をやりとげようと自分に誓った。

「実は…」

そして説明を始める。

………

 

 

 

「…という事なの」
「わかんね〜」
「で、どういうことなんだ」

終わった頃には開始してから小一時間たっていた。
司は近くの植物を見ていたし、セイルーンは座り込んでいる。
せっかくの説明が理解してもらえなくても、恋する乙女のやる気は消えなかった。

「簡単に言うと、何らかの力が働いて、こことは違う場所からとばされてきたのよ」
「とばされた?」
「かぜのかみさまでもおこらせたのか?」
「いや、とりかも」
「その飛ばすじゃなくて…」

すると、黙って聞いていた、他の個体より一際大きな白いものが話し始めた。

「よく解らないけど、お前たち迷子なんだよな」
「うん、まあ…
「そうなるのかなぁ」

セイルーンも同意を示す。

「おれたちはこの辺りのことしか解らないから、別の奴を紹介するよ」
「え、だれだよ」
「なつめか?」
「あいつはだめだろ、きよわだし」
「じゃあ、まさかあんず?」
「ひぇ〜」
「いや、むしろえにしじゃないか?」
「お〜、なるほど」

複数の名前らしきものを挙げながら、好き勝手に話している。
そんな仲間の姿に溜息をつき、先ほどの個体が司に声をかけた。

「今言ってた、縁ってやつなら何か知ってると思う」
「…わかった」

こうして、異界からの訪問者は、帰る術を求めて動き始めたのであった。

 


(2013年5月27日)

 






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